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大根(ダイコン)の各成長ステージにおけるNPK(窒素・リン・カリウム)吸収量(g/m²)の総合調査レポート

概要

本報告では、大根(ダイコン)の主要な成長ステージごとの窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)吸収量(g/m²)について、国内外の一次研究・農業指導情報をもとに詳細に整理する。多くの文献で「収穫時点での累積吸収量」は明示されている一方で、個々の成長ステージでの吸収量の定量データは稀であり、吸収パターンの図表や段階別割合を根拠に推定値を導く方法が一般的となっている。そこで、本報告では一次データと、各成長ステージの吸収分配割合に基づく論理的な推定法を併用し、科学的根拠をもって各ステージごとのNPK吸収量を定量化する。

大根の主な成長ステージとNPK吸収パターン

1. 成長ステージの定義

  • (1)発芽期(播種~発芽直後、約7~10日)
  • (2)苗期・葉の生長期(発芽後~25日程度、葉数が増加し主根が生育準備を進める期間)
  • (3)根肥大期(25~60日程度、主根(だいこん部)の急激な肥大・貯蔵根形成期/出荷までの中心期)
  • (4)開花(薹立ち)期(通常は収穫後に進行、出荷を過ぎた残存株で顕著)

これらの定義は主要な日本の農業研究所や普及機関の資料で統一されている[1][2][3][4]。

2. 大根のNPK吸収曲線と総吸収量

  • 累積吸収量(収穫時点・3.3kg/m²(33t/ha)の標準的な収量に基づく):

    • 窒素(N):8.1 g/m²
    • リン(P):1.6 g/m²
    • カリウム(K):11 g/m²
  • 収量依存で吸収量は増減するが、吸収パターンは成長ステージにより一般的傾向が見られる[5][6][7][8]。

  • 吸肥パターン(各ステージでの累積吸収の割合):

    • 発芽期:0~3%
    • 苗期・葉の生長期:5~10%
    • 根肥大期:70~80%
    • 開花(薹立ち)期:10~20%(通常、市場収穫用途では未吸収)

上記パターンは、多くの野菜生理学・普及指導資料および日本語での根拠ある図面で一致している[1][4][9][10]。

各成長ステージごとのNPK吸収量推定値(g/m²)

1. 発芽期(0~3%)

  • N:8.1 g × 0.02(平均2%)=約0.16 g/m²
  • P:1.6 g × 0.02=約0.03 g/m²
  • K:11 g × 0.02=約0.22 g/m²

特徴: この期間は吸収量が非常に少なく、施肥設計上ほぼ無視できる[3][4]。

2. 苗期・葉の生長期(5~10%)

  • N:8.1 g × 0.075(平均7.5%)=約0.61 g/m²
  • P:1.6 g × 0.075=約0.12 g/m²
  • K:11 g × 0.075=約0.83 g/m²

特徴: 主に葉の生長と初期根の発達を支えるが、吸収総量はまだ少ない段階[1][4]。

3. 根肥大期(70~80%)

  • N:8.1 g × 0.75(平均75%)=約6.1 g/m²
  • P:1.6 g × 0.75=約1.2 g/m²
  • K:11 g × 0.75=約8.3 g/m²

特徴: 収穫直前までの養分吸収の中心。主根の肥大・品質形成に最も重要な期間[1][2][4]。この時期の施肥切れや不足は直接的に根の肥大や品質低下に直結する[3][6]。

4. 開花・薹立ち期(10~20%)

  • N:8.1 g × 0.125(平均12.5%)=約1.01 g/m²
  • P:1.6 g × 0.125=約0.20 g/m²
  • K:11 g × 0.125=約1.38 g/m²

特徴: 市場出荷用大根は根肥大期終了間際に収穫が多く、実際にはこの追加分の吸収を必要としない場合が多い[2][4]。薹立ち期は種子採り・留置株といった特殊栽培に関連。

推定方法と信頼性

  • 推定根拠:上記吸収量の分配比は、日本の野菜生理・普及指導機関および学術論文から得られた吸肥曲線および養分累積率のグラフ・記述を、定量化して算出[1][4][5][7][8][9][10]。
  • 文献評価:吸収量モデルや吸肥パターン値は実測に基づき、複数の土壌・栽培環境で再現性が示されている[2][6][7][8]。段階別分配は大根以外の根菜類でも広く認められる普遍的な生理現象であり、農業実践でも用いられている[4][9][10]。

実際の農業現場への応用

  • 施肥設計:根肥大開始期に養分が不足すると、根の肥大・品質に悪影響。逆に苗期に過剰なNPKを投入しても吸収効率は悪い[3][4]。
  • 環境配慮:根肥大期に的確な追肥・吸収促進を図ることで、肥料残さや環境流亡リスクも低減できる[4][7]。

まとめ

  1. 大根のNPK吸収量は、根肥大期(主根肥大期)に総吸収量の75%前後を占める。
  2. 発芽期・苗期はあわせて10%以下と非常に少なく、施肥過多は非効率。
  3. 大根の標準的な総吸収量(3.3kg/m²収量時)はN 8.1g、P 1.6g、K 11g/m²。
  4. 吸収量の段階別推定は、日本農業研究機関・学術論文・普及指導資料の一致した吸肥パターンから論理的に導出、有効で実用性が高い。
  5. 市場出荷用大根では、「開花・薹立ち期」の吸収は一般に必要ない。

参考文献

Sources

  1. BSI生物科学研究所 ダイコンの成長ステージ
  2. 野菜の吸肥パターンを配慮した環境にやさしい施肥設計(公益財団法人日本肥糧検定協会)
  3. JA埼玉中央:ダイコンの肥料の上手な施し方
  4. メタン発酵消化液の秋冬ダイコンへの施用ならびに 化学肥料の代替(日本土壌肥料学会)
  5. Macro and micronutrients accumulation in radish (Raphanus sativus ...)
  6. Estimating nutrient uptake requirements for radish in China based on QUEFTS model (full PDF)
  7. Nutrient Uptake Potential of Nonleguminous Species and Its Interaction with Soil Quality
  8. Root yield and nutrient uptake of Radish (Raphanus sativus L.) as influenced by the application of organic and inorganic sources of nitrogen and their combinations
  9. Effects of NPK Fertilizer Application Rates and Intra-row Spacing on Yield of Radish (Raphanus sativus L.)
  10. Study on Growth and Root Yield of Radish (Raphanus sativus Lam.) as Influenced by Nutrition