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世界的なかぼちゃ（カボチャ、Cucurbita属）主要害虫と被害症状の総覧
概要
カボチャ（かぼちゃ、Cucurbita spp.）は世界的に重要な作物であり、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど多様な気候・栽培環境で栽培されています。カボチャに対する害虫被害は地域によって種類や重要度が異なりますが、被害症状としては萎凋（いちょう）、葉や果実の食害、組織内部への虫害、ウイルス伝播など多彩です。本総覧では、地域や栽培環境を問わず国際的に認識されている主なカボチャ害虫、その特徴的な被害症状、ならびにその分布・重要性を体系的にまとめます。参考文献は日本語・英語を主とし、多様な信頼性の高い文献を元に記載します。
世界的に認識される主なカボチャの害虫と被害症状
1. ウリハムシ類（Red Pumpkin Beetle, Aulacophora spp., Raphidopalpa foveicollis）
- 世界的分布: インド・アジアを中心に広く分布。日本でも「ウリハムシ」として主要害虫[1][2][3][4][5][6]。
- 被害症状: 成虫・幼虫が葉・花・実を食害し、葉に穴や骨葉状（網状）を生じる。発芽時〜初期生長期の被害が大きく、生長停止や収量・品質低下を引き起こす[1][2][5]。
- 管理法: 作物交互栽培、トラップ植物利用、物理的除去、防虫ネットなど[1][5]。
- 特徴: アジア圏で最重要害虫のひとつ。ヨーロッパ・アフリカでは重要度はやや低い。
2. ウリミバエ類（Melon Fruit Fly, Bactrocera cucurbitae 他）
- 世界的分布: アジア・アフリカ・熱帯/亜熱帯に幅広く分布。日本では「カボチャミバエ」が重要害虫[1][2][3][4][6][7]。
- 被害症状: 雌成虫が果実表面に産卵し、孵化した幼虫が内部を食害して腐敗・落果させる。外観に針穴や分泌物がみられる[1][6][7]。
- 関連種: 日本・韓国ではB. depressaが、南米ではAnastrepha grandisがそれぞれ重要または検疫害虫[8][9]。
- 管理法: 果実袋掛けなど物理防除、捕殺用トラップが中心[6][7][8]。
- 特徴: 温暖地での主害虫。果実生食への被害が深刻。
3. アブラムシ類（Aphids, Aphis gossypii 他）
- 世界的分布: ほぼ全世界で確認される最重要害虫[1][2][3][4][5][6][10][11]。
- 被害症状: 吸汁による葉のカールや縮れ、黄変、成長停滞。甘露によるすす病。特にカボチャモザイクウイルス等のウイルス伝播能で甚大な二次被害[5][10][11]。
- 管理法: ウイルス耐性品種の選定、防虫ネット、被害株の除去が主（殺虫剤はウイルス防除には効果限定）[5][10][11]。
- 特徴: 主要なウイルスベクターであり、管理難度が高い。
4. コナジラミ類（Whiteflies, Bemisia tabaci 他）
- 世界的分布: 温暖帯から熱帯全域で拡大傾向。近年世界的に重要害虫化[5][11]。
- 被害症状: 吸汁による黄化斑点、葉の変色・萎縮、すす病発生。ウイルス伝播（例：ククルビットイエロースタンツウイルス）[1][5][10][11]。
- 管理法: ローテーション防除、被覆ネット利用など。薬剤耐性発生例が多い[5][11]。
5. ウリクビナガハムシ・ウリキュウリタマバチ類（Cucumber Beetles: North America）
- 世界的分布: 北米地域の主要害虫。アジアではAulacophora spp.が同様の役割[5][12]。
- 被害症状: 葉・花・根への食害、穴・骨葉状、苗の生長遅延や枯死。細菌性萎凋病（Bacterial wilt）等のベクター[12]。
- 管理法: 防虫障壁設置や輪作、発生初期の薬剤防除[5][12]。
6. ウリノメイガ類（Diaphania hyalinata、ウリノメイガ、D. indica）
- 世界的分布: アメリカ大陸（米国、ブラジル等）で主要害虫。日本では導入事例あり[13]。
- 被害症状: 幼虫が葉・茎・蕾・果実内に入り込み加害。最大で80%近い減収例も記録。糸を出して葉を巻く特徴[13]。
- 管理法: 感染葉の除去、Bt等生物農薬使用[13]。
- 特徴: アジア域での被害は限定的。
7. ウリバエ類（Squash Vine Borer, Melittia cucurbitae）
- 世界的分布: 北米で最重要。アジアではあまり報告なし[12][14]。
- 被害症状: 幼虫が茎や蔓内部を食害し、急激な萎凋・枯死を招く。典型的な突発萎凋例[14]。
8. カメムシ類（Squash Bug, Anasa tristis）
- 世界的分布: 北米～中米、南米一部で主要害虫[12][15]。
- 被害症状: 成虫・幼虫が葉・茎の導管を吸汁し、黄〜褐色斑、萎凋、枯死。細菌性黄化萎凋病（Yellow vine disease）の伝播も[15]。
- 管理法: 卵塊・若虫の物理除去、早期発見が重要[15]。
9. ハモグリバエ類（Leaf Miners, Liriomyza spp.）
- 世界的分布: アジア、南米、米国等で重要[1][2][3][5][11][16]。
- 被害症状: 幼虫が葉肉内をトンネル状に食害し光合成量減少。ダメージが積み重なると生育不良[16]。
- 管理法: 生物農薬、天敵利用、被害葉の除去[11]。
10. ハダニ類（Spider Mites, Tetranychus urticae）
- 世界的分布: 世界各地、特に高温・乾燥期で多発[1][2][3][5][17]。
- 被害症状: 黄白点や退色、葉表のクモの巣状の糸、激発時は落葉・減収[17]。
地域的に重要、または検疫上注目すべき害虫
- Anastrepha grandis（南米のウリ類果実バエ）: 日本では未発生だが、輸入果実への検疫リスクが高い。果皮下に産卵し、幼虫が内部で腐敗を引き起こす。外見での判別が難しく、加熱処理やシステム的輸入管理が推奨されている[9]。
- Bactrocera depressa: 韓国・日本で重要（遺伝解析で両国間の個体群移動も報告）[8]。
ウイルス病の媒介としての害虫
- アブラムシ類・コナジラミ類・ウリハムシ類は、カボチャで最も深刻なモザイクウイルス・ポティウイルス等の主要媒介害虫である。ウイルス制御は媒介虫自体の完全駆除だけでなく、耐病性品種や防虫ネット・管理的除去が効果的[5][10][11][12]。
日本における重要害虫レビュー（和文・実践寄り）
日本の生産現場・実用ガイドにもとづくと、ウリハムシ、アブラムシ、カボチャミバエ、ハダニの重要度が高く、物理的防除（防虫ネット・袋掛け）、輪作、発生生態把握に重点が置かれています[5][6][7][8]。
まとめ
カボチャにおける害虫被害は、「葉や果実の食害」「萎凋・枯死」、「果実内部加害」「ウイルス病伝播」など多岐にわたり、害虫種の地域性はあるもののアブラムシ・ウリハムシ類・ミバエ類・コナジラミ類・カメムシ類などは世界的に主害虫として認識されています。ウイルス伝播能、物理的被害双方への対策が欠かせず、近年は統合的病害虫管理（IPM）、耐性品種、防虫ネット等の適切な組み合わせが推奨されています。
Sources
[1] Insect Pests Associated with Pumpkin Crop (Cucurbita moschata) at ...: https://sciety.org/articles/activity/10.21203/rs.3.rs-6114943/v1
[2] Insect Pests Associated with Pumpkin Crop (Cucurbita Moschata) At ...: https://bioresscientia.com/article/insect-pests-associated-with-pumpkin-crop-cucurbita-moschata-at-golaghat-district-of-assam-india
[3] [PDF] Insect Pests Associated with Pumpkin Crop (Cucurbita Moschata) At ...: https://bioresscientia.com/uploads/articles/1747467698Galley_Proof-Insect_Pests_Associated_with_Pumpkin_Crop__Cucurbita_Moschata__At_Golaghat_District_of_Assam,_India.pdf
[4] Major insect and pest in cucurbitaceous crop and their management: https://www.entomologyjournals.com/assets/archives/2024/vol9issue4/9069.pdf
[5] 病害・害虫対策 (Pumpkin disease and pest management guide): https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/20020457.pdf
[6] カボチャの病気と害虫｜症状の特徴と防除方法 | やまむファーム: https://ymmfarm.com/cultivation/pest/by-veg/pumpkin-pests/
[7] カボチャの害虫と病気一覧｜カボチャミバエの防除方法やカビ対策 ...: https://greensnap.jp/article/10312
[8] [PDF] Population structure of the pumpkin fruit fly Bactrocera depressa ...: https://biology.sdsu.edu/pub/andy/Mun2003.pdf
[9] Anastrepha grandis に関する 病害虫リスクアナリシス報告書: https://www.maff.go.jp/j/syouan/keneki/kikaku/pdf/2_2_2_anastre_grandis_pra.pdf
[10] Pumpkin and squash-Aphid | Pacific Northwest Pest Management ...: https://pnwhandbooks.org/insect/vegetable/vegetable-pests/hosts-pests/pumpkin-squash-aphid
[11] カボチャ病害虫と防除/腐敗対策: https://www.asahi-agria.co.jp/cms/agria/seed/howto/pdf/01_pumpkin_howto_pestcontrol.pdf
[12] Cucurbit Insect Management - Extension Entomology: https://extension.entm.purdue.edu/publications/E-30/E-30.html
[13] Management of Diaphania hyalinata caterpillars in Japanese ...: https://revistacultivar.com/articles/management-of-diaphania-hyalinata-caterpillars-in-Japanese-pumpkin-cultivation
[14] Pumpkin, Squash, Cucumber, and Melon Pests - U.OSU: https://u.osu.edu/pestmanagement/crops/pics/cucurbits/
[15] Squash Bugs | USU: https://extension.usu.edu/planthealth/research/squash-bugs
[16] [PDF] Comprehensive review of pumpkin (Cucurbita spp.): Domestication ...: https://isvsvegsci.in/index.php/vegetable/article/download/1087/742
[17] ニホンカボチャ黄色い縁取りの治療方法は？: https://www.picturethisai.com/ja/disease/Cucurbita-moschata-Yellow-edges.html