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じゃがいもの各成長ステージにおけるNPK(窒素・リン・カリウム)吸収量(g/m²)の調査報告

概要

本報告では、じゃがいもの主要な成長ステージ(Sprouting【発芽】、Emergence【出芽】、Vegetative【栄養成長】、Tuber Initiation【塊茎形成】、Tuber Bulking【塊茎肥大】、Flowering【開花】)ごとに、N(窒素)、P(リン)、K(カリウム)吸収量(g/m²)を、国内外の学術論文・公的機関資料・農業指導書などに基づき、可能な限り具体的にまとめる。直接的なステージごとの吸収量データがない場合は、推定方法・根拠・仮定も明示する。

ポテトの総NPK吸収量と施肥推奨量(年間合計値)

  • 一般的な推奨施肥量および総吸収量は、生産地・品種等により変動するが、概ね以下が目安である。
    • 窒素(N):150~200 lb/acre(約17~22 g/m²)
    • リン(P):10~30 kg/ha(約0.1~0.3 g/m²)
    • カリウム(K):最大7 kg/Mg(1トンあたり7 kg程度;最盛期で5 kg/ha/日=0.5 g/m²/日以上吸収)
  • 日本でも、北海道など主要産地指導要領にて、これらと同等かやや控えめな総施肥量が示されている【1】【2】【3】【4】【5】【6】。

成長ステージごとのNPK吸収動態(概説)

発芽・出芽期(Sprouting, Emergence)

  • この時期のNPK吸収量はごく少なく、種芋内の養分に主に依存。
  • じゃがいもの吸収量全体の10%未満。特にPはこの時期から根や幼小塊茎形成に向けて重要であるが、吸収スピード自体はまだ低い【1】【4】【7】【9】。
  • 推定される吸収量(合計吸収量の5~10%程度):
    • N:1~2 g/m²
    • P:0.01~0.03 g/m²
    • K:1~2 g/m²

栄養成長期(Vegetative)

  • 地上部の急速な生長に伴い、吸収量が増加。特にN吸収が活発化し始める。
  • この段階の終わりまでに全吸収量の最大30%前後を消費。
  • Pは根・初期塊茎形成を支えるため、重要度が高まるが、絶対量は小さい。
  • Kは炭水化物輸送や耐病性維持の働きで需要が徐々に上昇【1】【4】【5】【8】【10】。

塊茎形成期(Tuber Initiation)

  • 吸収量はさらに急増、特にNとKの需要が顕著に跳ね上がる。
  • 一説では、塊茎形成開始から肥大期にかけて全体の60~80%のN,K吸収が進むとされる。
  • Pはこの時期に急増し、塊茎数・活着安定に重要(Pの吸収のピーク)【2】【6】【7】【9】【11】。

塊茎肥大期(Tuber Bulking)

  • 圧倒的に多くのNとKが吸収される、Pはピーク後緩やかに増加。
  • 吸収最大日当量は以下の通り。
    • N:0.45~0.52 g/m²/日
    • P:0.03 g/m²/日
    • K:0.6 g/m²/日
  • 一時期の吸収速度が著しく高い。全吸収量のうち、Kは7割近くがこの時期に集中する【4】【5】【6】【7】。

開花期(Flowering)

  • 開花期は塊茎肥大の始まり・中期に重なり、N・K吸収も高水準を維持。
  • Nはやや早めに吸収ピークがくる傾向あり、吸収量はPokyの生長に直結。
  • Kは引き続き主要な需要期【1】【4】【5】。

各ステージごとのNPK吸収量推定(g/m²)

成長ステージを平均的な栽培暦に合せ、吸収実測値・日当たり吸収量・累積率等から、下記に推定値をまとめる。

成長ステージ推定期間(目安)N吸収量 (g/m²)P吸収量 (g/m²)K吸収量 (g/m²)
発芽 (Sprouting)播種~10日0.5–1.00.005–0.010.5–1.0
出芽 (Emergence)10~20日0.5–1.00.005–0.010.5–1.0
栄養成長 (Vegetative)20~35日2–50.015–0.042–4
塊茎形成 (Tuber Initiation)35~50日5–70.05–0.124–8
塊茎肥大 (Tuber Bulking)50~85日10–130.08–0.1810–16
開花 (Flowering)60~75日2–40.01–0.032–4

※推定値は文献中の総吸収量・累積カーブ・日吸収量・季節進行の分布率に基づく。実際には生育期間・天候・施肥方法・品種により大きく揺れるため、あくまで標準的な想定である。

推計方法と根拠

  • 複数の農学論文・公的ポスター・施肥ガイドで提示されている吸収累積曲線や、日ごとのピーク吸収速度を、各期の持続日数に乗じて算出している【4】【5】【6】【7】【9】。
  • 吸収が極めて少ない初期(発芽・出芽)は全体の5~10%とし、以降のステージ分布を累積吸収率に従って割当て。
  • Pの吸収は初期~塊茎形成で全体の40~50%、Kの吸収は塊茎形成以降に大幅増と報告されていることを反映。
  • それぞれの区間の合計が文献記載の総吸収量に合致するよう調整。

日本語情報の反映

  • 農林水産省・都道府県レベルの施肥指導書でも、リン酸は初期の根張り・塊茎数に、カリは生育全般・特に塊茎肥大期に重要とされ、吸収ピークとも一致【8】【9】【10】【11】。
  • 専門誌・学会誌で、比較的多吸収作物として位置づけられ、特に北海道型大面積栽培では吸収曲線もよく研究されている。

まとめ

  • 成長ステージ別NPK吸収量の直接計測値の完全な網羅は難しいものの、日吸収曲線や累積分布、国内外農学資料より、おおよその目安値は得られる。
  • 施肥設計・栽培管理上、Pは初期手当て、N・Kは特に中期以降の大量供給・段階的施用が、吸収曲線と論理的一致を示す。
  • 実栽培では品種・気候・土壌条件により最適値が異なるため、提示値はあくまで設計の出発点・参考基準とするべきである。

Sources

[1] A Summary of N, P, and K Research with Potato in Florida: https://edis.ifas.ufl.edu/publication/CV233
[2] Growth and phosphorus uptake of potato (Solanum tuberosum L.) in ...: https://stud.epsilon.slu.se/10081/1/weimers_k_170411.pdf
[3] Critical potassium dilution curve for potato crops - ScienceDirect.com: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378429024002454
[4] Nutrient Uptake and Partitioning by Potatoes in Manitoba (PDF): https://www.gov.mb.ca/agriculture/crops/soil-fertility/pubs/soil-fert-poster-25.pdf
[5] Potato | Nutrien eKonomics (PDF): https://nutrien-ekonomics.com/wp-content/uploads/2024/10/EKO_2024_CropGuide_Potato.pdf
[6] Effect of Irrigation and Nitrogen Management on Potato Growth ...: https://www.mdpi.com/2073-4395/14/3/560
[7] Facebook (potato tuber bulking stage K uptake): https://www.facebook.com/groups/926416337842161/posts/2170649233418859/
[8] 主要畑作物のリン酸吸収特性の比較 - AgriKnowledge (JP): https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030853636.pdf
[9] 土づくりと施肥管理Ⅱ - 日本土壌協会 (JP): https://www.japan-soil.net/BOOKLET/TK24/TK24_A4.pdf
[10] 肥培管理のためのセンシングや ICT 利用の研究の現状とその実用場面 (JP): https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/89/1/89_890113/_pdf
[11] 栄養吸収効率を高めることによりジャガイモの収量と品質を向上 (JP): https://www.meikyo-shoji.co.jp/library-4411/