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玉ねぎの成長ステージごとのNPK(窒素・リン・カリウム)吸収量(g/m²)に関する総合調査報告

玉ねぎの主な成長ステージ定義

玉ねぎの生育は、大きく以下の4段階に分けられます(日本および国際的農業ガイドライン共通):

  1. 発芽・苗立ち期(Germination/Seedling stage, 発芽・苗立ち期)
  2. 栄養成長期(Vegetative/Leaf and Stem Elongation, 葉・茎伸長期)
  3. 球形成・肥大期(Bulb Initiation and Enlargement, 鱗茎肥大期)
  4. 開花・採種期(Flowering/Seed Production, 開花・結実期)

これらの名称や区分は日本語文献の表記と一致しており、肥培管理や分析の際の基礎単位となっています[1][2]。

各成長ステージにおけるNPK吸収特性の概要

吸収ピークの明示

  • 玉ねぎのNPK吸収は、生育後半、特に球形成開始から収穫60日前の30〜40日間に集中します。この期間で**全体吸収量の約80%**が吸収されると、北海道農業試験場などの日本の公式文献や国際的ガイドラインで一致しています[1][2][3]。
  • 発芽・初期栄養成長ではごく少量(全体の5〜10%未満)の養分が吸収され、主な吸収は葉が十分に展開しバルブ(鱗茎)が膨大化し始める時期に移行します。

吸収パターンの概要(定量値を含む)

  • 日本および国際文献で報告される玉ねぎの1作期あたりの総NPK吸収量の目安(標準的栽培、平均収量)は次の通りです:
    • 窒素(N): 10〜17 g/m²
    • リン(P): 2.5〜4.5 g/m²
    • カリウム(K): 4.5〜8 g/m²[3][4][5]
  • これらは土壌分析・葉分析・養分除去量などに基づく現地実測あるいは体系的調査により算出されています。

成長ステージごとのNPK吸収量の推定値(g/m²)と根拠

各時期の割合割当(日本および国際的根拠の集約)

吸収の割合は主に日本・海外両方のフィールド実験および施肥指針の総括値から抽出できます[1][2][3][6][7]。
代表的な標準値(10 g N/m², 3 g P/m², 6 g K/m²を例に取った場合)の各ステージへの割当を以下に示します。

成長ステージN吸収P吸収K吸収割合 (%)主な吸収特性・根拠
発芽・苗立ち期~0.3–0.5~0.1–0.2~0.3–0.52–5%吸収量はごく微量、根系未発達[1][3]
栄養成長期~1.2–2.0~0.3–0.6~0.9–1.612–20%葉の生長と分蘖開始、葉緑体生産増[1][3][6]
球形成・肥大期~8–13.5~2–3.6~3.6–6.470–80%主吸収期、バルブ成長が養分需要の中心[1][3][6][7]
開花・採種期微量微量微量数%以下(0〜5%)種子生産用のみ。通常は養分移行期[1][3]

標準推定例(10 g N/m², 3 g P/m², 6 g K/m²モデル)

  • 発芽・苗立ち期(2–3週間):

    • N: 0.3–0.5 g/m²
    • P: 0.1–0.2 g/m²
    • K: 0.3–0.5 g/m²
  • 栄養成長期(葉・茎伸長):

    • N: 1.2–2.0 g/m²
    • P: 0.3–0.6 g/m²
    • K: 0.9–1.6 g/m²
  • 球形成・肥大期(収穫60日前から30–40日間):

    • N: 8–13.5 g/m²
    • P: 2–3.6 g/m²
    • K: 3.6–6.4 g/m²
  • 開花・採種期(種取用栽培):

    • 吸収はほぼゼロ、新たな養分吸収は極めて限定的(多くは葉から鱗茎への養分移動)[3][6]

これらの値は生産地・品種・施肥条件によって多少前後します(多収栽培などでは最大20–25 g N/m²に達する例もあり)[5]。

主な科学的根拠

  • 北海道農業試験場データにより、「全体吸収量の約80%が、収穫60日前からの30–40日間(バルブ肥大期)に集中」と複数回繰り返し明示されています[1]。
  • 海外大学出版物[2][3]やグローバル肥料会社ガイド[4][6][7]でもほぼ同内容が確認できます。
  • 葉の倒伏・枯死以降は地上部からの新たな吸収は停止し、既吸収養分が鱗茎部へと優先的に転流される現象が観察されます[1][6]。

吸収量分布の推定方法と根拠

科学的推定法の一般的手順

もし現地作物やステージごとの吸収量が明示されていない場合、以下の方法で推定が科学的に正当化されます:

  1. 最大収量基準の総吸収量(g/m²)を参考値とする
     → 収量1000 g/m²相当の吸収基準(例:N 10 g/m²など)を適用[2][4]。

  2. 農業指針や論文に記載の吸収パターン(%割当)を利用し、総吸収量に掛けて各時期の吸収量を算出
     → 例:「全体の80%が球形成期」など[1][3][6]。

  3. 分期ごとの日数または生物量増加量(バイオマス増分)で分割推定する
     → 豊富な生育観察・サンプリングデータ(日本でも多用)[2][3]。

例:算出実施

仮に玉ねぎの総N吸収量が12 g/m²(標準栽培)ならば、

  • 発芽期(3%):0.36 g/m²
  • 栄養成長期(15%):1.8 g/m²
  • 球形成・肥大期(80%):9.6 g/m²
  • 開花期(2%):0.24 g/m²

この方法は、北海道農業試験場[1]やPacific Northwest Extension[2][3]、ICL/Haifaなど国際的施肥ガイド[4][6][7]でも、ほぼ同様の割当法で現地施肥設計や追跡分析に採用されています。

ステージ別吸収量データの直接測定と推定値の精度

  • 各ステージの直接測定値(g/m²)は、ごく一部のフィールド試験や学術論文(葉の時系列サンプリング、養分分析)でのみ得られています。しかし、現代の多くのガイドラインでは総吸収量を上記パターン%で割り当てる方式が主流・現実的かつ科学的根拠も圧倒的です[1][2][3][5]。
  • 成長ステージごと吸収ピークの温度幅や前後時期の揺らぎはありますが、ほぼ上記区分で大きな偏りなく説明可能と国際・日本文献で確認されています[1][2][6][7]。

まとめ

  • 玉ねぎのNPK吸収は、球形成・肥大期(バルブ肥大が始まってから収穫前30〜40日間)に全体の約80%、栄養成長期までの吸収は20%程度に留まる。
  • 吸収量の詳細ステージ割当は、総吸収量に対してステージごと定めの%を掛けることで高精度で推定可能。
  • 本調査で用いた日本語・国際文献ともに、ステージ割当の根拠・パターン・推定方法について科学的合意があり、現場実用性も高い。

参考文献・ソース

  1. 北海道農業試験場「玉ねぎ栄養管理(分吸収特性と施肥法)」PDF
  2. Nutrient Management for Onions in the Pacific Northwest - Oregon State/Washington State/Idaho PDF
  3. Nutrient Management for Onions in the Pacific Northwest - Oregon State PDF
  4. Haifa Group「Onion crop guide」
  5. Review on Mineral Nutrition of Onion (Allium cepa L) - ScienceDirect/Open Biotechnology Journal
  6. ICL Growing Solutions「Nutrient Management During Onion Bulb Development」
  7. Onion - Nutrient Management According to the Stages of Crop Growth (ICL Group)