レタスの各成長ステージにおける積算温度（GDD）必要量の調査報告

概要

本報告では、レタスの成長ステージごと（発芽期、幼苗期、生育期・結球期、抽苔・開花・結実期）に必要とされる積算温度（Growing Degree Days, GDD, 積算温度）について、日本語および英語の科学文献・園芸マニュアルを基に詳細に調査した。主要な積算温度値が直接的に示されているステージにはその値を明記し、直接データが得られないステージについては、実際の温度・期間・レタスの基準温度（base temperature）などから推定値を提示する。また、積算温度が使用される際に基準となる温度や最適温度等についても整理した。

レタスの成長ステージ区分と全体的特徴

レタスの成長ステージは主に以下の4つに分類される：
- 発芽期
- 幼苗期
- 生育期・結球期（葉の形成から結球、収穫まで）
- 抽苔・開花・結実期（生殖成長期）
積算温度（GDD）は主に発芽から収穫までの期間管理や、結球/収穫のタイミング予測に利用される。一方、抽苔・開花期に関しては主に温度と日長条件が強く影響し、積算温度による具体的な閾値は文献記載が少ない。
レタスの基準温度（GDD算出基準温度）は2〜5°C、最適温度は15〜22°C（発芽、育苗期）・18〜23°C（生育期）とされる[1][2][3][4][5][6]。

各成長ステージごとの積算温度（GDD）値

1. 発芽期

最適温度：15〜22°C（とくに18〜20°Cが最適）。
期間：2〜7日（最短2日、条件が悪いと10日程度まで）。
基準温度：2〜5°C。
必要な積算温度（推定）：
- 例：18°C（平均気温）、期間5日、基準温度2°Cの場合：
  (18-2) × 5 = 80°C・日
- 期間2〜7日、温度15〜20°Cの場合は20〜100°C・日程度が目安となる[2][4][5][7][8]。
備考：低温・高温どちらも発芽率を低下させやすいため、最適温度での管理が重要。

2. 幼苗期

最適温度：15〜22°C。
期間：2〜3週間（14〜21日）。
必要な積算温度（推定）（例: 18°C, 基準温度2°C, 21日間）：
- (18-2) × 21 = 336°C・日
- 基準温度5°Cの場合：(18-5) × 21 = 273°C・日
参考：このステージは根・葉の初期成長が進み、本葉が数枚出揃う時期[1][6]。

3. 生育期・結球期（定植〜収穫）

a) 定植〜結球開始前（葉数増加期）

結球開始は本葉12〜13枚程度から[1]。
静岡農林技術研究所報告（2020）：
- 冬季厳寒期のレタスでは「定植から収穫（本葉約38枚で結球収穫）」まで**積算温度751°C・日（基準温度2°C）**が必要と直接計測されている[9]。
- 新たな予測式により葉齢の増加と積算温度の関係も数式化されている（y=0.0584x–5.8537；y:葉齢, x:積算温度）[9]。
通常の春作等では、定植から収穫まで30〜40日程度が一般的。

b) 結球開始〜収穫

タキイ種苗等の園芸マニュアルより：
- 早生品種: 350〜380°C・日
- 中生品種: 400°C・日
- 晩生品種: 450〜500°C・日
- ※基準温度は明記されない場合も多いが、0〜5°Cが一般的[1][2][6][9]。
日本全国の普及マニュアルでも、上記値は大量に引用されており信頼性が高い。
**定植から収穫までの積算温度（全体）**は751°C・日（2°C基準、冬季）〜800°C・日前後が基準となる[9][10]。

4. 抽苔・開花・結実期

積算温度の直接的な閾値/必要量は文献記載が極めて少ない。
主な要因：
- 高温（昼間24〜25°C以上、夜間15°C以上）や長日条件が抽苔・開花を誘発する[3][11][12][13]。
- 抽苔は生育期の積算温度が一定閾値を超えることよりも、急激な高温および日長影響が支配的。
海外文献も含めGDDによる抽苔期管理の数値記載はほとんど存在しない[12][13]。

積算温度管理の実際と活用上の注意点

積算温度による管理は、収穫適期や葉齢、出荷計画の予測に極めて有効[9][10]。
葉齢と積算温度の増加はほぼ比例し、葉が約40枚になると結球成熟期となる[10]。
生長段階ごとに最適温度帯を維持することで、急激な生育障害を抑止しやすい。
抽苔については、GDD管理よりも栽培環境（温度・日長）コントロールがより重要。

各ステージのまとめ表

成長ステージ	最適温度	期間	積算温度（GDD, 基準温度2〜5°C）
発芽期	18〜20°C	2〜7日	20〜100°C・日（推定）
幼苗期	15〜22°C	14〜21日	273〜336°C・日（推定）
生育期・結球期	18〜23°C	30〜40日	結球開始〜収穫: 350〜500°C・日定植〜収穫: 約751°C・日（基準2°C, 冬季）
抽苔・開花・結実期	24°C以上で発生	--	具体的なGDD値は不明。主に高温・長日で誘発

まとめ

レタスの育成管理において積算温度（GDD）は主に定植から結球・収穫までの期間予測に活用されており、日本の園芸文献では特に結球種で350〜500°C・日（品種・作型による）がよく用いられている。発芽〜幼苗期のGDDも推定可能だが、抽苔・開花期の具体的なGDD閾値は現状では見つからない。全体として、積算温度管理と合わせて各成長ステージごとに温度・日長管理が不可欠であり、特に抽苔防止には環境コントロールが重要となる。

レタスの各成長ステージにおける積算温度（GDD）必要量の調査報告 ​

概要 ​

レタスの成長ステージ区分と全体的特徴 ​

各成長ステージごとの積算温度（GDD）値 ​

1. 発芽期 ​

2. 幼苗期 ​

3. 生育期・結球期（定植〜収穫） ​

a) 定植〜結球開始前（葉数増加期） ​

b) 結球開始〜収穫 ​

4. 抽苔・開花・結実期 ​

積算温度管理の実際と活用上の注意点 ​

各ステージのまとめ表 ​

まとめ ​

Sources ​