キュウリ（胡瓜）の各成長ステージにおける温度要件の詳細まとめ

概要

キュウリ（Cucumis sativus）は温暖な環境を好み、各成長ステージ（発芽、苗、開花、結実）において適切な温度管理が不可欠です。本報告では、日本の学術・園芸資料および国際的な研究文献に基づき、各成長ステージごとに下記の温度パラメータについて整理し、複数の定義や値の相違がある場合は全て報告します。

optimal_min（最適最低温度）
optimal_max（最適最高温度）
base_temperature（基準温度）
low_stress_threshold（低温ストレス閾値）
high_stress_threshold（高温ストレス閾値）
max_temperature（許容最高温度）
frost_threshold（霜害閾値）
sterility_risk_threshold（開花期のみ：不稔リスク閾値）

曖昧または明確な定義が文献上見当たらない場合、その旨も明記します。

1. 発芽期の温度要件

発芽期パラメータ整理

optimal_min/optimal_max（最適最低温度・最適最高温度）
- 25〜30°C：ほぼ全ての日本および英語園芸資料で一致[1][2][3][4][5][6]。
base_temperature（基準温度）
- 15°C：多くの出典で「最低15°C」が明記され、これ未満では発芽は著しく遅延または停止[1][2][3][7]。
low_stress_threshold（低温ストレス閾値）
- 明確な数値的定義は文献に見られないが、20°C未満（特に15°C〜20°C）で発芽遅延・揃いの悪化が報告されている[3][4][7]。
high_stress_threshold（高温ストレス閾値）
- 30°Cを超えると発芽率の低下や揃いの悪化が観察されるが、35〜40°Cで著しい悪影響[2][3]。
max_temperature（許容最高温度）
- 40°C：「発芽可能な最高温度」として示されることが多いが、実際には30°Cを超えると発芽率や揃いに悪影響[3][7]。
frost_threshold（霜害閾値）
- 明確に数値化された情報はなく、ほぼ全ての資料で「遅霜が完全になくなってから播種」と記され、霜（0°C以下）は種子や新葉に致命的[5][6][8]。
sterility_risk_threshold（不稔リスク閾値）
- 発芽期には該当しない。

複数の定義やレンジ

ほぼ全ての文献・実践書で一致した温度範囲。ストレス閾値の厳密な数値は記載がないため、実務上は「最適温度から外れた時点で危険」と理解されている。

参考

「発芽適温：25〜30°C（最低15°C〜最高40°C）」[1]
「家庭菜園では晩霜の恐れがなくなってから播種」[8]

2. 苗期の温度要件

苗期パラメータ整理

optimal_min/optimal_max（最適最低温度・最適最高温度）
- 20〜25°C（タキイ種苗・養液栽培ガイドなど）[9][10]
- 25〜32°C（日中）、14〜16°C（夜間）：宮城県野菜生産マニュアル[10]
base_temperature（基準温度）
- 明確な基準温度は文献に少なく、14〜16°C（夜間）が「最低適温」とされることが多いが、絶対的な下限値の明記は少ない[10]。
low_stress_threshold（低温ストレス閾値）
- 8°C：生理学的な低温ストレス（特に養分吸収の抑制）が報告されているが、農業現場の最低夜温14〜16°C未満でストレスが始まる[12][13]。
high_stress_threshold（高温ストレス閾値）
- 33°C超：温室内午前のピークが30〜33°Cを超えるとつる伸長の抑制・品質低下が現れる[11]。
max_temperature（許容最高温度）
- 約45°C：葉や生育体に生理学的障害が生じる[14]。
frost_threshold（霜害閾値）
- 明確な数値は日本語文献に存在しないが、実践上0°C前後以下で苗も致命的被害[5][6]。
sterility_risk_threshold（不稔リスク閾値）
- 苗期には該当しない。

定義が曖昧なパラメータ

base_temperature, low_stress_threshold, frost_threshold について、明確に数値化された日本語資料はなく、農家・実践書では「最低夜温14〜16°C以下を避ける」「霜の恐れがなくなってから定植」等の記述。

3. 開花期の温度要件

開花期パラメータ整理

optimal_min/optimal_max（最適最低温度・最適最高温度）
- 日中22〜28°C、午前25〜28°C、夜間17〜25°C[15][16][17][18][19]。
- 一部24〜30°Cまたは20〜28°Cのレンジを提唱する文献も有り[16][20]。
base_temperature（基準温度）
- 10〜12°C（生育下限）[17][19]
- 15°C（特に花分化・着果安全のための実用的最低温度）[17][18]
low_stress_threshold（低温ストレス閾値）
- 10〜15°C未満：生育・開花抑制、稔性・花粉活性の低下、明確な数値ではなく幅を持たせて記載[18][21][22]。
high_stress_threshold（高温ストレス閾値）
- 35°C以上：高温による葯亀裂不良・稔性低下リスクを複数ソースが指摘[22][23][24]。
max_temperature（許容最高温度）
- 35〜40°C：超えると着果不良・生育障害[17][22][23][24]。
frost_threshold（霜害閾値）
- −2〜0°C：ほぼ全資料でこの範囲が致命的とされる[17][19]。
sterility_risk_threshold（不稔リスク閾値）
- 35°C以上（高温）：着果不良・葯亀裂不良・花粉粘着低下等[22][23][24]。
- 10〜12°C以下（低温）：明確な実験値は少ないが、悪影響が言及される[21][24]。

レンジ・定義のばらつき

実践マニュアルや品種特性・施設栽培によって記載温度が微妙に異なる。
稔性・不稔温度範囲などは「高温側は35°C以上が危険」と広く合意、一方で低温側は12〜15°C以下で危険性が高まるものの実験的厳密値は明記されていない。

4. 結実期（果実肥大・収穫期）の温度要件

結実期パラメータ整理

optimal_min/optimal_max（最適最低温度・最適最高温度）
- 日中20〜30°Cで安定した品質・収量を確保[25][26][27][28][29]。
- 午前25〜28°C、午後20〜25°C、夜間15〜16°C運営が果実太りに適すると日本資料に多数[26][27]。
- 地温18〜23°Cも求められる[25][26]。
base_temperature（基準温度）
- 15〜16°C（生育/果実肥大停止ライン）[25][30]。
- 海外作物モデルによるGrowing Degree Daysでは15.5°C（60℉）[30]。
low_stress_threshold（低温ストレス閾値）
- 15°C以下または9〜14°Cで果実着果不良・チル障害が始まる[25][28][31]。
high_stress_threshold（高温ストレス閾値）
- 30〜33°C以上で形状異常・呼吸増大・商品価値低下[26][29]。
- 38〜40°Cで著しい品質不良・収量減少[26][32][33][34]。
max_temperature（許容最高温度）
- 35〜38°C。これを超えると恒常的被害・急激な果実障害[26][34]。
- 42°C以上では生育抑制・生殖器官機能障害[33][34]。
frost_threshold（霜害閾値）
- 0°C前後。−2°C以下で致命的凍害。果実・苗・生育個体共通[17][19][27]。
- 7〜10°Cで長期間管理すると貯蔵「チル障害」増加（特に収穫後）[30][35]。
sterility_risk_threshold（不稔リスク閾値）
- 結実期には直接該当せず。

レンジや矛盾

形質・栽培形態・土壌条件により一部資料が異なる数値を示すが、33〜38°Cを越えると多くの文献で生産性大幅低下に合意。
低温側は、空気温度のみより地温の重要性が強調されることがある[25]。

5. 各ステージ温度パラメータ総括表

ステージ	optimal_min（°C）	optimal_max（°C）	base_temperature（°C）	low_stress_threshold（°C）	high_stress_threshold（°C）	max_temperature（°C）	frost_threshold（°C）	sterility_risk_threshold（°C）
発芽期	25	30	15	15〜20未満	30以上（35〜40）	40	0 以下（要回避）	該当なし
苗期	20	25〜32	14〜16 推定	14〜16未満 (8以下で強ストレス)	33以上	45 葉障害（文献）	0 以下（推定）	該当なし
開花期	22（夜17）	28（夜25）	10〜15	10〜15未満	35〜40	35〜40	−2〜0	35 以上／10〜12 未満（推定）
結実期	20（夜15〜16）	30	15〜16	15未満（9〜14でチル障害）	30〜33〜38	38〜42	0、−2	該当なし

※scientific・園芸資料間において±2°Cほどの微差があるが、概ね上記レンジで収束。

6. 明確な定義がない・曖昧なパラメータ

low_stress_threshold/high_stress_threshold
- 多くの文献で明確な数値指定はなく、「最適範囲を逸脱するとストレス・生育不良」と解説される。
- 苗期の低温ストレスは8°C実験値があるが、実務上は14〜16°C未満がリスク水準。
- 高温側は33〜35°C超を超えると障害が著しいという実践報告が多い。
sterility_risk_threshold（開花期）
- 高温側は35°C以上が危険域とほぼ全資料合意。低温側は明確な明記なし、通常は12〜15°C未満で花粉稔性低下が言及されるものの、数値実験値は乏しい。
frost_threshold
- 全ステージで0°C～−2°Cが致命的とされるが、文献によっては「霜被害に十分注意」とのみ表現される場合もある。

7. 実務上の温度管理のポイント

播種・定植：必ず遅霜回避後、最低地温・夜温15°C確保[5][6]。
苗育成：20〜25°C管理。夜温14〜16°C以下で生育が押さえられるため、低温回避必須[10]。
開花・結実：日中25〜28°C／夜間18〜25°Cを守り、35°C超・12°C未満を避ける[16][17][22][24]。
果実膨大・収穫：地温・気温とも15°C〜30°Cの管理、30°C超では異常果増加や収量減少が生じる[25][27][29]。
高温・低温ストレス：33〜38°C、9〜14°Cで生理的/収量的障害発生。致死的には−2〜0°C[16][19][22][32]。

キュウリ（胡瓜）の各成長ステージにおける温度要件の詳細まとめ ​

概要 ​

1. 発芽期の温度要件 ​

発芽期パラメータ整理 ​

複数の定義やレンジ ​

参考 ​

2. 苗期の温度要件 ​

苗期パラメータ整理 ​

定義が曖昧なパラメータ ​

3. 開花期の温度要件 ​

開花期パラメータ整理 ​

レンジ・定義のばらつき ​

4. 結実期（果実肥大・収穫期）の温度要件 ​

結実期パラメータ整理 ​

レンジや矛盾 ​

5. 各ステージ温度パラメータ 総括表 ​

6. 明確な定義がない・曖昧なパラメータ ​

7. 実務上の温度管理のポイント ​

Sources ​