ブロッコリーの各成長ステージにおけるNPK（窒素・リン・カリウム）吸収量（g/m²）の総合調査報告

概要

本報告では、ブロッコリーの主要成長ステージ（発芽期、実生期、栄養成長期、花蕾形成期、開花期）における窒素（N）、リン（P）、カリウム（K）の吸収量（g/m²）について、既存の主要科学文献―特に日本語文献を中心に―調査し、直接的なステージ別吸収量データおよび合理的な推定方法をもとに示す。また、フィールド栽培と管理環境（温室・水耕栽培等）のデータ差異にも言及し、見解をまとめる。

1. NPK吸収パターンの基礎知識と観察手法

成長ステージ定義

• 発芽期: 種子発芽から子葉展開（おおよそ播種後0-7日）
• 実生期: 4〜6枚の本葉が展開し鉢上げ・定植に適する時期（播種後21〜28日）
• 栄養成長期: 葉・茎の急速成長期。蕾形成開始前まで（播種後30～50日、定植後20～30日が目安）
• 花蕾形成期: 花蕾（頂部花序）の分化開始から収穫適期まで（栽培期間末期の2〜3週）
• 開花期: 花蕾の成熟および収穫、収穫後に至るまで（期間は品種・環境により変動）

吸収量測定方法

• 破砕サンプリング法: 一定間隔（10日～3週ごと）で地上部を採取し、乾物重とNPK含有率を分析。各時点の吸収量を算出し、積算カーブ作成
• 区間差分法: 吸収量カーブ上の各ステージ始・終点の差分が段階別吸収量となる
• 単位面積あたり算出: 栽植密度により1株データから1 m²への換算が可能

2. ステージ別NPK吸収量（g/m²）：フィールドデータに基づく実測値と推定値

以下、主に日本の農研機構（NARO）や都道府県農業試験場、国際機関のフィールド報告値をもとに、一般的な栽培法での各段階の累積吸収量（各段階終了時点）をまとめる。『+』はそのステージでの新たな追加吸収量を示す。

2-1. 発芽期（0-7日）

• N: 0.01〜0.05 g/m²未満（全体の1%未満。種内Nによる生育が主）
• P: 0.003〜0.01 g/m²（極少量）
• K: 0.01〜0.05 g/m²未満

「初期成長ステージでは蓄積養分の利用が主で、土壌吸収はごく僅か」[1][2]

2-2. 実生期（～28日、定植まで）

• N: 0.1〜0.3 g/m²（総吸収量の5〜10%）
• P: 0.03〜0.05 g/m²（総吸収量の10〜20%）
• K: 0.1〜0.3 g/m²（総吸収量の5〜10%）

「実生期でのN・K吸収量は少ないが、リンは比較的均等に吸収される傾向」[2][7]

2-3. 栄養成長期（定植後：約20〜30日間）

• N: +1.2〜1.8 g/m²（累積計1.5〜2.0 g/m²、総吸収量の50〜60%）
• P: +0.07〜0.12 g/m²（累積計0.10～0.15 g/m²、総吸収量の40〜60%）
• K: +1.2〜1.7 g/m²（累積計1.5～2.0 g/m²、総吸収量の50〜60%）

「N・K吸収が本格化し、乾物増加率と平行して急増」「窒素吸収のピークは出蕾期にある」[7][11]

2-4. 花蕾形成期（急速肥大期、収穫直前）

• N: +0.6〜1.0 g/m²（累積計2.5～2.8 g/m²、総吸収量の80〜90%到達）
• P: +0.07〜0.10 g/m²（累積計0.17～0.22 g/m²、総吸収量の80〜90%到達）
• K: +0.6〜1.0 g/m²（累積計2.5～2.8 g/m²、総吸収量の80〜90%到達）

「乾物および養分蓄積カーブの急上昇。カリは乾物増加と親和」[11][6][14]

2-5. 開花期（収穫期～採種・残渣処理）

• N: +0.05〜0.2 g/m²（累積計2.8〜3.0 g/m²）
• P: +0.02〜0.05 g/m²（累積計0.2〜0.25 g/m²）
• K: +0.05〜0.2 g/m²（累積計2.8〜3.0 g/m²）

「栄養吸収はほぼ頭打ち。花蕾中にNの40%、Kの30～40%が集中」[11][14][19]

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2-6. ステージ別累積吸収量早見表（目安／フィールド条件）

成長ステージ	N（g/m²）	P（g/m²）	K（g/m²）
発芽期	<0.05	<0.01	<0.05
実生期（定植時）	0.1–0.3	0.03–0.05	0.1–0.3
栄養成長期終了	1.5–2.0	0.1–0.15	1.5–2.0
花蕾形成期終了	2.5–2.8	0.17–0.22	2.5–2.8
開花期終了	2.8–3.0	0.2–0.25	2.8–3.0

※系統や生育条件ごと差異あり。最大値は施肥体系・環境・収量に依存。

3. 推定方法と論理根拠

直接ステージごとの吸収値が報告されることは稀だが、主要基礎文献では下記の合理的推定法が取られている：

1. 累積吸収カーブ法
   定期的な破砕サンプリングによる乾物測定と組成分析から作成されたN・P・K吸収曲線を、日数や形態指標（葉数、蕾出現等）に割り当て。
2. 区間差分法
   各成長ステージ間での累積吸収量増加分を差分計算し、各ステージ吸収量とする。
3. ヘクタール・10a・株→m²換算
   多くの日本語資料ではkg/10aやg/株データが多く、（1 kg/10a＝0.1 g/m²）で換算可。
4. 文献確認
   「窒素吸収のピークは出蕾期」「リンは比較的ゆるやかに吸収」など成長ステージごとの特徴を勘案し推定。

これらにより、根拠あるステージ別吸収量推計が可能となる[11][14][6][15][19]。

4. フィールド vs. 管理環境の違い

• フィールド栽培
  全国農業研究センターやUC Davis/California Fertilizer Guidelines等ほぼ共通し、N:2.5~3.0g/m²、P:0.2~0.25g/m²、K:2.5~3.0g/m²が標準。吸収パターンも同様。
• 管理環境（温室・水耕）
  吸収割合は類似も、総量は乾物生産量が制限されればやや小さくなる。とはいえ、ステージ進行に伴う吸収増加傾向は共通して観察される[8][3][4]。

5. 日本語・国際文献のまとめ

• 「窒素吸収のピークは出蕾期にあり」（長野県資料）[2]
• 「出蕾期～収穫期にカリ吸収最大化。乾物・K吸収は並行」（農研機構）[11]
• 「小葉期・実生期ではリンの吸収比率が相対的に多い」（BSI/肥料施用学）[14]

これら科学的根拠により、上記数値および吸収パターンの推定は信頼性が高い。

6. 結論と実務的インプリケーション

• NPK吸収の多くは栄養成長期末から花蕾形成期に集中するため、追肥・管理もこの時期注力が肝要。
• リンは初期吸収比率が高く、基肥でのバンディング・早期施用が合理的。
• 吸収パターン・ステージ比率は品種や気候で変動も、全体累積量・吸収集中期はほぼ共通。

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参考文献

Sources

[1] リン酸・カリ蓄積圃場におけるブロッコリーセル苗全量基肥区の生育および養分吸収特性の変化: https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030811962.pdf
[2] 11 ブロッコリー - 長野県公式ホームページ: https://www.pref.nagano.lg.jp/nogi/documents/11burokkori.pdf
[3] Effect of Different levels of Liquid Nitrogen, Phosphorus and Potassium on Growth, Yield and Quality of Broccoli (Brassica Oleraceae Var. Italica) in Hydroponic: https://journalijecc.com/index.php/IJECC/article/view/2424
[4] Influence of NPK on growth, yield and nutrient content in broccoli under drip and conventional irrigation: https://www.thepharmajournal.com/archives/2023/vol12issue8/PartX/12-8-266-651.pdf
[6] Broccoli growth and nutrient accumulation - CABI Digital Library: https://www.cabidigitallibrary.org/doi/pdf/10.5555/20173164714
[7] (PDF) Broccoli growth and nutrient accumulation - ResearchGate: https://www.researchgate.net/publication/313540728_Broccoli_growth_and_nutrient_accumulation
[8] Nutritional and Visual Diagnosis in Broccoli (Brassica oleracea var ...): https://www.nuplant.com.br/docs/2020/doc_2020-75.pdf
[11] ブロッコリーの養分吸収特性に基づいた肥培管理法: https://www.naro.go.jp/laboratory/carc/kenkyu_koryu/files/kantoseika_h24NG04.pdf
[14] 「肥料施用学」 BSI 生物科学研究所 ブロッコリーとカリフラワー: http://bsikagaku.jp/f-fertilization/broccoli.pdf
[15] Broccoli - UC Davis Nutrient Management: http://geisseler.ucdavis.edu/Guidelines/Broccoli.html
[19] CA Fertilization Guidelines - Broccoli Nitrogen Uptake and Partitioning: https://www.cdfa.ca.gov/is/ffldrs/frep/FertilizationGuidelines/N_Broccoli.html