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ピーマン（Capsicum annuum）の各成長ステージにおけるNPK（窒素・リン・カリウム）吸収量（g/m²）の包括的分析
概要
ピーマン（Capsicum annuum）の栽培では、NPK（窒素・リン・カリウム）肥料の適切な施用が収量や品質向上の鍵となります。しかし、各成長ステージ（発芽期、育苗期、生育期、開花期、結実・肥大期、成熟・着色期）ごとの実際のNPK吸収量（g/m²）については日本国内外で直接的に段階別の定量データは限定的です。そこで、本報告では日本および国際的な文献・実験・モデルデータ・行政資料等をもとに、ステージごとの吸収量推定方法およびその根拠、実用上の注意点を体系的にまとめ、深い理解と現場での応用指針を提供します。
1. ピーマン全期におけるNPK吸収量の基礎データ
総吸収量（g/m²）の基準
日本の標準的なピーマン栽培において、収量（1,000kg/10a; 1,000kg/1,000m²、すなわち1kg/m²）あたりのNPK吸収目安は以下の通りです[1]：
- 窒素（N）：3.0～5.2g/m²
- リン（P）：0.6～1.1g/m²
- カリウム（K）：5.0～6.5g/m²
これは経済的収量水準での平均的な吸収値であり、日本の指導機関や施肥基準が示す値と整合しています[2][3]。
2. 各成長ステージの区分と生育期間
成長ステージの定義と特徴
ピーマンの典型的な成長ステージは下記のように区分できます[2][3][8]：
- 発芽期（播種～発芽直後）：2～7日
- 育苗期（発芽後～本葉展開・苗定植まで）：20～40日
- 生育期（栄養生長期）（定植～初開花ごろ）：20～30日
- 開花期（初開花～着果始め）：10～15日
- 結実・肥大期（着果～果実肥大・収穫開始）：30～50日
- 成熟・着色期（収穫後期～着色・成熟期）：20～30日
実際の期間は品種や栽培環境により異なりますが、これが標準的な目安です。
3. ステージごとのNPK吸収量の推定方法と分布割合
直接データの限界と推定アプローチ
日本国内の公的資料や実験データでは、発育過程別の吸収量が体系的に公表されているものは極めて少なく、主に季節合計値や施肥分け与え割合などから逆算する必要があります[3][4]。このため、以下の推定方法が有効です。
3.1 総吸収量を基にした推定法
- 手順：
- 目標収量・単位面積あたりの総NPK吸収量（上記参照）を基準にする
- 成長ステージごとのバイオマス増加率、分化の進行、国際的な吸収比率モデルによる割合（下表参照）を掛けて段階ごとの吸収量を推定する[13][19][8]
3.2 分布割合（国際モデル・先行研究からの推奨値）
複数の国内・国際文献やシミュレーション[13][8][19]によれば、ステージごとのNPK吸収比率の大まかな目安は以下の通りです。
| 成長ステージ | 吸収割合（％） | 備考 |
|---|---|---|
| 発芽期 | 0～2 | ごくわずか |
| 育苗期 | 5～10 | 栄養吸収能力低い |
| 生育期（定植～開花） | 20～25 | 株の急成長 |
| 開花期 | 15～20 | 生長＋生殖移行 |
| 結実・肥大期 | 30～40 | 最も吸収多い |
| 成熟・着色期 | 10～20 | 品質形成 |
N/P/Kで傾向は類似するが、カリは結実・肥大期で特に多く、リンは生育期～開花期で重点的に使われる傾向があります。
4. 吸収量の具体的推定値（g/m²）—標準ケース
サンプル計算（収量1,000kg/1,000m²の場合）
日本条件の標準収量1,000kg/1,000m²、総吸収量をベースにした場合の各ステージ推定吸収量は次の通りです。分布割合は前述モデル値平均をもとにし、N・P・K全てで同様の比率を用いています。
| ステージ | N（g/m²） | P（g/m²） | K（g/m²） |
|---|---|---|---|
| 1. 発芽期（2%） | 0.10 | 0.02 | 0.13 |
| 2. 育苗期（8%） | 0.40 | 0.07 | 0.52 |
| 3. 生育期（22%） | 1.10 | 0.22 | 1.43 |
| 4. 開花期（18%） | 0.90 | 0.16 | 1.17 |
| 5. 結実・肥大期（35%） | 1.75 | 0.33 | 2.34 |
| 6. 成熟・着色期（15%） | 0.75 | 0.13 | 0.98 |
| 合計 | 5.0 | 0.93 | 6.57 |
※N=5g/m²、P=0.93g/m²、K=6.57g/m²の場合。分布比率例：2%/8%/22%/18%/35%/15%
※下限値～上限値で計算しても吸収パターンは同様。
注記
- 育苗初期は根量・葉面積が小さく吸収能が限定的
- 生育・開花・果実肥大で爆発的な吸収増（特にNとK）
- リンは初期～生殖移行期まで旺盛に吸収され、着果数や花芽形成に影響
- 成熟期には果実品質・色づきにカリが作用
5. 補足事項・実用上のポイント
- 地域・品種・作型・気象で吸収実態は変動。あくまで目安値[2][5]
- 日本の施肥法では通常、分施や追肥で重要ステージへ肥効を集中させる設計が推奨されています[3][2]
- 圃場診断・土壌分析・葉分析等で現場適応性を高めることが実用上きわめて重要[2][4][5]
- Nの過剰施肥や晩期追肥は果実品質低下・病害誘発・資材ロスの要因となる[3][5][22]
- 有機栽培や施設栽培など特徴的な作型では吸収動態や最適化戦略も異なる[7][3]
6. 参考：推定・分配根拠となる主な文献・モデル
- 日本の行政資料・施肥ガイドライン（MAFF、都道府県指導書）[3][4][5]
- 海外の吸収モデル化研究および分施設計文献[13][8][19]
- 収量・バイオマス蓄積・生長段階ごと乾物重量比をもとにする推定手法[13][19]
- 吸収パターンに基づく栽培管理方策・追肥タイミング設計の国际的知見[8][13][14]
まとめ
ピーマンの各成長ステージごとのNPK吸収量（g/m²）は、日本国内外の直接データが乏しいものの、収量基準やバイオマス蓄積データ、モデル分布、施肥指導をもとにした論理的推定により、序盤ではごく少なく、栄養生長期から開花・果実肥大期で急増し、成熟期には果実品質形成への寄与が強いという特徴が明らかになりました。現場ではこうした知見を元に、地域・品種ごとの診断や施肥設計に活用することが推奨されます。
Sources
[1] 完璧なピーマンを育てるには？ヒントをいくつかご紹介します！: https://www.goldenefertilizer.com/ja/news/how-to-grow-the-perfect-green-pepper-some-tips-to-share-with-you/
[2] 「ピーマン」栽培のポイント - みらい蔵: https://mirai-zou.co.jp/advice/62/
[3] 4．作物の栄養生理と養分吸収 - MAFF: https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/gum12.pdf
[4] 第2部 果菜類の有機栽培の基本・共通技術 - 日本土壌協会: https://www.japan-soil.net/report/h25tebiki_02.pdf
[5] 土壌肥料対策指針 - 和歌山県: https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/072000/ecofamar/shishin/d00216389_d/fil/shishinzenbun.pdf
[7] Organic Fertilizer Optimization for Enhanced Growth and Nutrient ...: https://www.mdpi.com/2311-7524/11/9/1066
[8] Crop Guide: Nutrients for Pepper - Haifa Group: https://www.haifa-group.com/articles/crop-guide-nutrients-pepper
[13] Growth stage wise fertigation scheduling improves nutrient uptake ...: https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01904167.2020.1862194
[14] nutrition of the hot pepper crop - FAO: https://www.fao.org/4/y5259e/y5259e07.htm
[19] Modelling Nutrient Uptake of Sweet Pepper - ResearchGate: https://www.researchgate.net/publication/40094508_Modelling_Nutrient_Uptake_of_Sweet_Pepper
[22] Growth and Yield Responses of Sweet Pepper (Capsicum annum L ...: https://jpp.journals.ekb.eg/article_35501_ba9a11dfdd2dd82e39d5005669c3a32a.pdf