ピーマン（Capsicum annuum）の各成長ステージ別温度要件まとめ

概要

本報告は、ピーマンの主要な成長ステージ（発芽、育苗、栽培／生育、開花、結実・肥大、成熟・着色）の定義と、それぞれの温度要件（optimal_min, optimal_max, base_temperature, low_stress_threshold, high_stress_threshold, max_temperature, frost_threshold、開花期にはsterility_risk_thresholdも含む）について、主に日本の公的機関・学術資料を根拠に包括的に整理したものである。生産現場や品種特性、栽培方式（露地・ハウス）、気候帯の違いなどによる値のバラツキも注記する。未公開値がある場合は、その旨を明記する。

各成長ステージの定義

発芽期（発芽期）：播種から胚軸・子葉が土壌表面へ出現するまで。
育苗期（育苗期）：発芽～本葉数枚の健全な苗の育成・定植直前段階。
生育（栽培）期（生育期）：定植後～初開花まで。葉、茎、根の伸長発育。
開花期（開花期）：第1花開花から着花の波の最盛期。花粉・雌しべの生殖器官が成熟する重要時期。
結実・肥大期（結実・肥大期）：受粉・受精による果実の着生から急速肥大・内部発育まで。
成熟・着色期（成熟・着色期）：果実の生理的成熟～熟色完成まで（一般収穫は開花後30-40日）。
※本報告では、各段階を上記定義で整理する。

成長ステージ別温度要件一覧

1. 発芽期

optimal_min / optimal_max：28～30°C が最適（特に土壌温度）[1][2][3][4]
base_temperature：日本語文献に明記されていない
low_stress_threshold：25°C 未満で発芽揃いと発芽率が低下[4]
high_stress_threshold：35°C 以上は非推奨だが明記なし
max_temperature：明記なし
frost_threshold：該当なし（発芽停止/不可）
地域差・品種差：各県や気候地域差はほとんど無し、全国共通管理[2][4]

2. 育苗期

optimal_min / optimal_max：昼25～28°C ／夜間15～20°C（土壌昼28～30°C）[1][2][4]
base_temperature：育苗段階での基温は明記なし
low_stress_threshold：夜間10°C 未満は生育抑制・病害発生増[21]
high_stress_threshold：32°C 超でのストレス言及あるが定量値なし[2][4]
max_temperature：明記なし
frost_threshold：10°C 未満に注意、明確な「致死点」明記なし[21][3]
地域差：寒冷地ではハウス・トンネル育苗が一般[3]

3. 生育（栽培）期

optimal_min / optimal_max：昼25～30°C ／夜17～23°C（27～28°C/18～20°Cとも）[3][5]
base_temperature：基温は明記なし
low_stress_threshold：昼18°C以下、夜15°C以下で生育抑制[21][5]
high_stress_threshold：昼35°C超で生育障害（定量値は明記不足）[3]
max_temperature：明記なし
frost_threshold：定植安全域→最低気温10°C以上、地温は15°C以上[21][3]
地域差・品種差：北海道向け品種にやや寒さ耐性増

4. 開花期

optimal_min / optimal_max：20～30°C（特に花粉発芽・受精）[7]
base_temperature：明記なし
low_stress_threshold：15°C以下で花粉不稔・着果不良が発生[7]
high_stress_threshold：30°C超で花粉不稔率や落花が増加[7]
max_temperature：絶対的な致死点明記なし（30°C超で着果障害増）
frost_threshold：明記なし（但し、基本的に花は凍害で死亡）
sterility_risk_threshold：15°C以下または30°C超が不稔リスク域[7]
地域・品種差：全国で概ね共通[7]

5. 結実・肥大期

optimal_min / optimal_max：日平均20～28°C[16][3][4][21]
base_temperature：明記なし
low_stress_threshold：15°C未満で肥大不良・奇形果[7][16]
high_stress_threshold：30°C超で奇形・落果・肥大障害[7][19]
max_temperature：35°C超は注意対象（定量なし）[3]
frost_threshold：10°C未満で品質劣化（果実／胚胎性）[3][16]
地域差：品種特性よりやや下限が動くが実用範囲は共通

6. 成熟・着色期

optimal_min / optimal_max：20～25°C（着色に最適、貯蔵なら10°C）[8]
base_temperature：明記なし
low_stress_threshold：15°C未満で成熟遅延
high_stress_threshold：30°C超で果皮着色遅延（内部は成熟可）[8][19]
max_temperature：30°C以上で果皮遅色[8][19]
frost_threshold：10°C未満は至適貯蔵温度域外[3]
備考：収穫後は10°C, RH80%で15日以上保存可[3]

パラメータ明記なし・未公開項目

「base_temperature（発育基温）」は、主要ステージ（生育、開花、肥大、着色）について日本文献に定量明記なし。
「max_temperature（致死温度）」は各段階で明確な数値設定なし。
「frost_threshold（凍害致死限界）」も、「10°C未満で要注意」とされるが絶対死点設定に非ず。

地域・文献によるバラツキ

主要生産県・気候帯・技術指導間で最適値は±1～3°C程度の差範囲にあるが大差なし。
寒冷地は育苗時期を調整または耐寒性種利用。管理温度目標自体は全国的に概ね共通。
ハウス・露地の管理上の差は温度制御方法のみで、最適温度目標は変わらず。

成長ステージ別温度パラメータ一覧表

成長ステージ	optimal_min	optimal_max	base_temperature	low_stress_threshold	high_stress_threshold	max_temperature	frost_threshold	sterility_risk_threshold（開花期のみ）	参考文献
発芽期	28°C	30°C	—	25°C 未満	35°C 超	—	—	—	[1][2][3][4]
育苗期	25°C（昼）	28°C（昼）	—	10°C 未満（夜）	32°C 超	—	10°C 未満	—	[1][2][4]
生育期	25°C（昼）	30°C（昼）	—	18°C（昼）未満	35°C 超（仮）	—	10°C 未満	—	[3][5]
開花期	20°C	30°C	—	15°C 未満	30°C 超	—	—	<15°C または >30°C	[7]
結実・肥大期	20°C	28°C	—	15°C 未満	30°C 超	35°C 超	10°C 未満	—	[3][5]
成熟・着色期	20°C	25°C	—	15°C 未満	30°C 超	30°C 超	10°C 未満	—	[8]

参考文献

[1] ピーマンの育苗・栽培の温度管理は難しい？気をつける点は？: https://yuime.jp/post/bigin-green-pepper-cultivation-temperature
[2] 主な果菜類の発芽適温と育苗温度（生育適温）のめやす - 長野県: https://www.pref.nagano.lg.jp/sakuchi/nosei-aec/joho/gijutsu/documents/kasai-ondo.pdf
[3] ピーマンの栽培: https://www.hidefmc.com/piman/
[4] 【ピーマン育苗】発芽率100%を目指す！栽培方法や温度管理の ...: https://minorasu.basf.co.jp/80754
[5] 促成ピーマン栽培の作業体系のポイント - みんなの農業広場: https://www.jeinou.com/benri/vegetable/2013/10/221000.html
[7] Green Report - JA全農: https://www.zennoh.or.jp/greenreport/pdf/676/gr676_202510.pdf
[8] 催色期に収穫したカラーピーマン果実の着色促進に関する要因 ...: https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010872187.pdf
[16] カラーピーマン(パプリカ)の品種と生理生態的特性: https://www.pref.kanagawa.jp/documents/27252/531907.pdf
[19] Green Report - JA全農: https://www.zennoh.or.jp/greenreport/pdf/676/gr676_202510.pdf
[21] ピーマン - 野菜栽培マニュアル｜調べる - タキイ種苗: https://www.takii.co.jp/tsk/manual/piman.html

ピーマン（Capsicum annuum）の各成長ステージ別 温度要件まとめ ​

概要 ​

各成長ステージの定義 ​

成長ステージ別 温度要件一覧 ​

1. 発芽期 ​

2. 育苗期 ​

3. 生育（栽培）期 ​

4. 開花期 ​

5. 結実・肥大期 ​

6. 成熟・着色期 ​

パラメータ明記なし・未公開項目 ​

地域・文献によるバラツキ ​

成長ステージ別温度パラメータ一覧表 ​

参考文献 ​

Sources ​